能動ドットコム > 週刊 「村」2000

Photo by Makoto, SAROUDO
みなさんはじめまして 私は山形県在住の、写真撮影や自然が大好きなサラリーマンです。 「プロカメラマンです」「アウトドアマンです」といいきれないのが残念ですが、他にもジャズを聴いたり、バイクに乗ったり、格闘技に興味があったり、まあ、そんなことのために働いているみたいなものです。
 このコーナーに写真や文章を投稿できたのは、撮りためたポジをなんとかパソコンに取り込んでデータベースを作りたかったからです。それでスキャナーのこととか疑問があり、メール相談室で森田さんから色々教えていただいたのがご縁です。
 残したい風景(もの)としては、月山や朝日連邦のブナの森や動物たち、残り少ない自然などですが、「スノーシューの記事を」というご依頼でしたので、スキーやスノーシューをはいて撮影した冬の風景ということで、迷わず蔵王を中心とした霧氷、樹氷、岩氷などを投稿させていただきました。
 なお、ここにでてくる地名、名詞、説明などは正確ではないかもしれませんが、自分が知っている事をそのまま記したものですからご了承下さい。
 下手な写真と文章ですが、これを見た方が、冬の風景もいいな、雪の中も結構楽しいな、自然は大切なんて感じて下さったらとてもうれしく思います。
凍る限界樹 『凍る限界樹』  12月上旬  蔵王地蔵岳
CANON EOS-1 EFズーム80-200mm 2.8L ベルビア ベルボンマーク7三脚 F16オート -1EV
 紅葉の時期なら観光客でにぎわう蔵王ですし、スキー場が本格的に営業を始める12月下旬なら、コースはスキーヤーやボーダーであふれています。
 ところがこの時期は、私が最も好きな時期の一つです。その理由は、撮影したい場所には誰もいないからです。気の早いスキーヤーをそれでも何人かは見かけますが…
この時は中腹まで林道を車で上り、そこから機材を担いで山頂付近まで登りました。
目的地まで着くと、太陽はすでに西の朝日連邦付近まで傾いていましたが、寒さと疲労で被写体を探す余裕もなく、ただその場で弾む息を押さえていました。
 凍り付いた森林限界付近のアオモリトドマツは、この時は沈んでゆく夕日に赤く染まりわずかなぬくもりを感じているようでした。
 やがて、太陽が西の山に沈んでゆくと1本、また1本と色を失っていきました。そして、最後の残照が数本の樹氷を照らしたとき、三脚をセット。構図を決めてレリーズ。露出を変えてもう一枚。3枚目を撮ろうとしたときには、もうすべでの木々は色を失い、闇の中にとけ込んでいきました。急いで機材をしまい下山しましたが、途中ガサガサという音や、何者かの気配に怖さを感じ、疲労で動かない足を引きずるようにしてなんとか車にたどり着いたものです。
 そんな思いを何度も繰り返して、いったいどれだけのシャッターチャンスに恵まれるのでしょうか。しかし、美しい自然の中で過ごす時間は、日常の色々なことから自分を解放してくれるし、教わることも多いのです。うまく撮影もできて、雪を溶かしてコーヒーをわかしたり、樹氷の氷でオンザロックとしゃれ込んだり、写真ばかりが楽しみではないからこんな事を続けられるんでしょうね。
樹氷原夕照 『樹氷原夕照』  3月上旬  蔵王坊平 
CANON EOS-1 EFズーム28-80 mm 2.8-4.0L ベルビア ジッツオU型三脚 F11オート
 蔵王も3月にはいると、晴れる日も多くなり撮影もしやすくなります。そのかわり、初冬期のようにものすごい吹雪の後、すっと晴れて澄んだ空気の中、太陽が真っ赤に雪原を染めてくれる、というまさにチャンスとなるような条件が少ないような気がします。自分は、気象の専門家ではないので詳しいことは分かりませんが、どうも空気中の水分が多くガスッた感じになり、この写真のようにクッキリしない日が多いようです。当然太陽も赤くならず、白っぽく暮れていきます。
 この時は、スキーを履いて登ってきたので帰りは余裕があります。沈みゆく夕日をじっくりと眺めながら、コンビニで買ったおにぎりを食べ、温かい麦茶を飲んでしばし至福の時間。そういえば、何時間もこんなところを歩いていると、カメラマンやスキーツアーを楽しんでる数人の人に会うこともあります。一言二言話をして分かれますが、気が合えば再会を約束することもあり、こんな事も楽しみと言えばそうかもしれません。
樹氷のトンネル 『樹氷のトンネル』  2月中旬  蔵王坊平
CANON EOS-1 EFズーム28-80mm 2.8-4.0L ベルビアジッツオU型三脚 F16オート -0.3EV
 この時期の蔵王は一番積雪量が多く、樹氷も最大に成長します。この日は天気も良くなかったのですが、時々雲間から光が漏れて樹氷原を走っていたので、おもしろい写真が撮れるかなと思い粘っていました。本当なら、樹氷は一本ずつ離れて立っていますが、あまりの雪の多さで傾き、隣の樹氷に倒れかかりトンネル状態になっていました。
 やがて光が走ってきて、トンネルの向こうの樹氷を照らしたところをパチリ。なんということもない写真ですが、この日はどれもこれもすごい樹氷に圧倒されっぱなしでした。
春の樹氷原と南蔵王 『春の樹氷原と南蔵王』
春光のモンスター 『春光のモンスター』  3月中旬  蔵王坊平
CANON EOS-1 EFズーム28-80mm 2.8-4.0L ベルビア ジッツオU型三脚  F16オート
  3月も中旬になると日差しもだんだん強くなり、たくましかったモンスターたちも少しずつ崩れていきます。そんな「形」を探しながら樹氷原を歩くのも楽しいものです。
この時期は写真の被写体を探すというより、冬の重装備を脱ぎ捨て、軽やかにジーンズにトレーナーという、超ラフな格好で登っていきます。暖かい日差しを肌で感じながら、遠く月山や秋田県との県境にある鳥海山、新潟県との県境にある朝日連峰、福島県との県境にある飯豊連峰などを独り占めにして。それに、この時期はもうスキーやスノーシューはいらないのです。軽登山靴で十分。その気なら、雪上をスキップしながら登ってゆくことも可能です。で、一番の目的は?と聞かれれば、「やっぱビールでしょう」と自信を持ってお答えします。うまいんだな、これが。
『ハーレム』  3月上旬  蔵王坊平  
CANON EOS-1 EFズーム28-80mm 2.8-4.0L ベルビア ジッツオU型三脚  F16オート
  この写真は時期的にCDより少し前の3月初めのもの。天気の良さに誘われるように雪上を散歩していると突然の叫び声。が聞こえたような気がしました。何頭かの雌を侍らせハーレムに近づいたよそ者を威嚇して吠えている海獣の姿がありました。んー何とも不思議。すばらしい。僕は、これ以上ハーレムに近づくのをやめ、そおっと三脚をセットして1枚だけ写真を撮らせてもらいました。
岩氷と鳥海山 『岩氷と鳥海山』 11月上旬  鳥海山
CANON EOS-10 EFズーム35-135mm ベルビア ジッツオU型三脚  F22オート +0.5EV
  秋田県との県境にある鳥海山には、四季を通して何度も足を運びます。6月下旬から咲き始めるチングルマやハクサンイチゲ、そしてニッコウキスゲなど、夏の登山シーズンはいつでも何らかの高山植物が咲いていて私たちの目を楽しませてくれたり、被写体になってくれます。
 そんな美しい鳥海山も、11月の2日か3日あたりに鳥海ブルーラインが閉鎖されれば、もう来年の春まで来ることができません。厳冬期の、シュカブラに厚く覆われて、鎧をまとったようなすごみのある鳥海山を撮れる羨ましい写真家や山岳会の人もいるようですが、写真も登山も超アマチュアの私ではどうすることもできません。唯一、ブルーラインが開通している時期に積雪があり、なおかつ、当日が休みという偶然が重なったときにだけ撮影が許されるのです。
 この場所は、鳥海山きっての景勝地として有名な鳥海湖付近です。手前に岩氷を配し、奥に鳥海山という、典型的な山岳写真ふうに撮っていますが、インチキ山岳写真です。
それでも、僕にとっては何度も何度も撮影できる被写体ではないし、事実あれから5〜6年経っていますが再撮影できないままです。ですから、それまでは一応大切な思い出に残る1枚です。
『寒桜』 11月下旬  蔵王パラダイスゲレンデ
PENTAX 645 A645ズーム80-160mm ベルビア ジッツオX型三脚  F22オート
  この場所は蔵王でもとても好きなところで、1年のうちでも10〜20回は通っているでしょう。何しろ車でここに来れるし、大きなダケカンバの木があったり、秋には真っ赤な実を付けるナナカマドがあちこちにあるし、小さな池があったり、ブナの木もたくさんあるし、春の芽吹きの時から晩秋の霧氷の着く頃まで、もう他の乗用車が来れなくなっても僕のRV車は何本も重い三脚やレンズを積んでここへつれてきてくれます。撮影ができないときでも車内でコーヒーをわかして、好きなジャズを聴かせてくれますしね…
おっと話がそれましたけど、こんな霧氷の写真は午前中いっぱい雲に覆われていて気温もかなり低く、太陽が西の空に傾く頃雲が突然切れてくれる、というような時でないと撮れません。もちろんその時、自分も仕事が休みでそこにカメラを持っていないといけないですが。この時も、そんな難しい条件がぴったりそろって撮らせてもらった1枚です。
  辺り一面ピンクに染まり、山全体が桜の木かな?と思われるようでした。こんな光景も10分もあるでしょうか。構図は?被写体は?なんて考えている余裕もなく、とりあえずシヤッターを押すのが精一杯。いつも思うことは、ここは余計だった、もっとアップで…なんて後悔ばかり。そして何年も撮り直しができないままでいます。へなちょこカメラマンで悲しいです。
『樹氷幻想』 12月上旬  蔵王地蔵岳
PENTAX 645N A645ズーム45-85mm ベルビア ジッツオV型三脚  F32オート -0.3EV
  パンフレットや写真では青空に真っ白な樹氷、というのはよく目にするんですが、僕が撮りたいのは、朝日夕日に真っ赤に染まる樹氷。ということは、リフトやロープウェイが使えず、自分の足で登り、自分の足で下山しないといけないんです。だから、どんなに気象条件が良くても体調が完璧でないとだめなんです。ただでさえ1シーズンに数日あるかないかの天気なのに、そんなことだから何枚も撮れないんです。
 この写真は、12月上旬、樹氷としてはまだ成長期。でも、だからハイマツなどの低木も雪に埋もれる前で、エビのしっぽを纏っていられるのです。この日も午前中吹雪。午後から晴れて、運良く自分もここに居合わせました。まるで「風の谷のナウシカ」にでてくるオームのようでした。そんなオームが最もそれらしく見えるアングルから撮影しました。左奥には、大きく成長したモンスターを配してみました。みなさんは何に見えましたか?
『雪珊瑚』  12月上旬 蔵王地蔵岳
PENTAX 645N A645ズーム45-85mm ベルビア ジッツオV型三脚  F22オート +0.3EV
  山頂付近は沢山の雪があるのに、まだ冬休み前で、スキーヤーもそれほど多くなく撮影にはグッド。空気も澄んで、もしかして夕日が赤く樹氷を照らしてくれるのでは…などと心の中でニヤニヤ。でもそんなに甘いものではなくて、写真のように白々と暮れてゆくのでした。あてもなく、スノーシューをつけて歩き回っていると、まるで珊瑚のような樹氷を発見。普通に撮れば背景の樹氷と重なってしまいます。仕方なく空に抜くことに決めました。この時の僕の格好は雪の上に仰向けになり、胸をまたぐように三脚をたてています。はるか上空には寒々とした三日月がぶら下がっていました。これを撮し込んでなんとか1枚。撮影後、ふわふわした新雪の上では思うように体を動かせず、雪の中で泳ぐように悪戦苦闘。やっととの思いで起きあがれたのでした。それから暗い樹氷原の中をヘッドライトをたよりに下山。手も足も冷たくて、やっとゲレンデにでたときは、ほっとしたものでした。冬山はすぐ暗くなります。要注意です。
『樹氷残照』 蔵王地蔵岳
PENTAX 645N A645ズーム45-85mm ベルビア マンフロット三脚 F32オート +0.7EV
最後になりますが、これも12月上旬の撮影。さっと吹雪いた後は空気が澄んで夕日が赤くなってくれることが多いのです。それにスキーコース付近の樹氷はあまり人が多いと手やストックで崩されてしまうことが多いのです。足跡もいけません。だから人が少ないこの時期を集中的に撮影しています。初めてのひとは、まあ、天気に恵まれることのほうが大変でしょうが、2月になると、樹氷のライトアップが行われ、それに伴い、ロープウェイも夜遅くまで運転しているので撮影後これに乗って下山できます。天気がそんなに良くなくても山頂付近がライトアップされると、昼とは違った樹氷も見れますよ。
 蔵王スキー場は、蔵王温泉を基地とした蔵王スキー場と(樹氷祭り、樹氷ライトアップ等あり)、蔵王坊平高原の蔵王ライザスキー場があります。蔵王ライザスキー場は、駐車場も広くかんじきトレッキングなんかもあるようで、樹氷の中をスキーやスノーシューであるきたい人はこちらがおすすめです。詳しくは、どちらもホームページがありますからアクセスして見て下さい。
http://www.zao-ski.or.jp/
http://www.zaoliza.co.jp/
佐良土真理さんは、データを全てフロッピーに入れてポジと共に送ってくださいました。可能な限り原文通りに掲載させていただきました。これらの写真の著作権は全て佐良土真理さんに帰属します。個人で楽しむ以外の使用は固くお断り申し上げます。(NowDO.com企画・制作部)

浅草 浅草寺  to SON