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「森田正明の映像教室」より 企画と構成         2005年更新
「森田正明の映像教室」Vol.12 企画と構成

※月刊誌の特集原稿のため、図・表は割愛しています。


 前フリ

「とにかく撮る」からの脱皮。
企画・構成がいかに大切かを考えてみます。

今回は「番組がどのようにして作られていくのか」を実際の制作過程と照らし合わせながら見ていきましょう。
大きなテーマは「マウス」このテーマを絞り込む話から始まります。

始めに企画ありき(序章)

季刊のトッパナ、どういう内容にすべきか思案の中、編集部からの企画会議(ってほどでもないか)に呼ばれるところから話が始まります。
原稿締め切り8日前のことです。
あ〜でもない、こ〜でもない、という煮詰まらない話の中、ふと目についたチョットお洒落な「ワイヤレスマウス」。

森田「例えばこのマウスを撮る場合…」
編集長「それ、いこう!ロケは金曜日に」
って1ヶ月以上時間があったのに、何で(いつもどおり)原稿締め切り4日前のロケなの…。
明日も別のロケ入ってるし、編集もたまってるし…。
ピアノのレッスン(※1)だってあるんだぞよ。
ヒマそうに見えても結構忙しいのぢゃ。

この打合での決定事項は
1.ロケは10時〜14時
2.テーマはマウス
3.ターゲットは一般視聴者及び読者
大まかなポイントは十分にオサエていますが実は、とっても大きな問題があります。
私は、あちこちのビデオクラブへお邪魔してお話をさせていただく機会が多いのですが、テーマはやはり旅行が一番です。
楽しい一泊バス旅行、気持ちはわかりますが、2日間を5分にまとめるところに無理があります。
先日、あるビデオクラブから撮影旅行のお誘いがあり同行させていただきました。
初日、目指すは榛名神社。

到着のアナウンスの後、添乗員さんからマイクをもぎとって(余計なアドバイスを)一言「皆さん、『榛名神社』を撮らないで下さいね」。
石のように固まる人たち…「(心の中で)フッフッフッ、ざまあ見ろ」。
「禅問答ぢゃないんだから」
という非難にも
「ふんッ、あたしゃガキの頃から変人で通ってんだい」

テーマの絞り込みとターゲット
例えば「マウスを撮りましょう。」と言われたら、大抵は頭の中が真っ白になると思います。
とにかく撮って、あとは編集で何とかしようというのは浅はか。
どう考えても他人に訴えるものができるわけがありません(※2)。

先の榛名神社にしても、短い時間で榛名神社という壮大なテーマを撮ることは不可能です。
〜の仁王門、〜の瓦屋根のようにより絞ったテーマにする必要があります。
今回は、マウスというとってもビッグなテーマを与えられたわけです。
「マウスがそんな大きなテーマ?」と思われる方も多いと思いますが、マウスといっても、ボタンの数やホイールの違い、ワイヤレス、光学式、はたまた販促か取り扱い説明かメンテナンスか…。
インターネット社会〜パソコン〜マウスという小さな入力装置まで絞り込まれてもまだまだ膨大な(表現方法が多い)テーマなわけです。

従って、「マウスの何」というところまで絞り込まないと散漫な作品になってしまいます。

テーマと一身同体なのがターゲット。
視聴者=誰に見せるか?が番組の成否を決めると言っても過言ではないでしょう。
視聴者層によって、見せ方は大きく変わります。

視聴者が子供なのか男なのか女なのか…自分との関係なども係わってきます。
見てもらう時間帯。
視聴場所は1人なのか大人数で見るのかなど様々な要因によって、番組の長さ、構成、演出から1カットの長さ、ナレーターは男性か女性か、BGM
の曲調、テロップ(字幕スーパー)の縦書き横書きや書体に至るまで実に多くの事が決まってきます。

ターゲットが決まっていないと何もできません。
わかりやすいところで言えば、アメリカ人に見せるのに思いっきり日本語テロップじゃあ、誰が見ても変でしょ?

そこで、大きく3つに分類してみました。
1.CM
的イメージビデオ(販促・若者向)
2.右クリック(解説・パソコン初心者向)
3.行き当たりばったり(不明。不明)

さて、1のCM
的イメージビデオ(以下CMチック)の想定は自動車会社の新型車のCMのような感じで15秒。
もちろん日本人の若者〜中年向け(男女問わず)としました。
イメージなので、あえてナレーションは英語としました。
マイクロソフトのマウスであることと、何となくかっこいい雰囲気を出すためです。

ちなみにナレーターはお金がかかるので、私が読んでいます。
発音の悪い部分はご勘弁ください。
また、恥ずかしいのでダースベイダー調にイフェクトをかけていますので、余計におかしくなっています。ご勘弁のほどを。

(※3)本来は低音の男性ネイティブ発音でいきたいところです。
2の「右クリック」は、マウスの右クリックだけにテーマを絞り、パソコン初心者向け(男女問わず)としました。
内容を膨らませることは簡単なのですが、今回のテーマが企画構成なので、最小限の1分34秒です。
3の「行き当たり…」は本誌の熱心な読者?の一人、黒田君(アシスタントになったり、モデルになったり、編集オペレータになったりと大忙しの毎日です)にその場で「マウスをテーマに何か撮って」とだけ言って編集までしてもらいました。
1分半です。

DVD:制作講座_1ご参照。

構成〜台本〜ナレーション原稿(前々日)

右のシートが台本です。
ペラをDVDに収録(
PDFファイル)してありますのでご覧ください。
「CMチック企画書」はナレーション原稿と基本思想しか書いていません。
これに少々加えたものだけで撮影に望みました。

「右クリック台本」もこれ以外にはモデルの「読み」用のナレーション原稿だけです。
たったこれだけのものでもとっても大切なもので、撮影には決して欠かせないものとなります。

さて、構成をするときに一番大切なことはなんでしょう。
それは「調査(情報収集)」という段階です。
前項のようにテーマやターゲットが決まればすぐに構成に入れるとお考えの方も多いと思いますが、実は「調査」こそが番組の良し悪しを決めるポイントになります。

まっ、ぶっちゃけた話、きっちり丹念に調査されたものしか番組にしちゃあいけないのです。
これらの台本もホント、やっつけ仕事のように見えますが、実は、かなり調べています。
たった15秒、数カットの制作ですが、マウスの取説やらマイクロソフトの英語版サイト(英語のナレーションにするための情報収集)やらいろいろ調べています。

この情報収集のポイントは「頭を真っ白にして調べること」。
少数意見に縛られないためです。初めから「こうあるべき」という頭で調査をすると、自分自身の結論に近い情報しか集まらず、結局、限られた情報になってしまいます。

こんなこと調べてもしょうがないとは思わずにとことん調査してみることです。
きっと自分の知らないことが見つかるはずです。
また、勘違いや思い違いも見つかることでしょう。
神様じゃあないんだから。


そうして調べ上げた情報を分類していきます。
Windows
のエクスプローラを思い浮かべてください。
ツリー構造にしていき、それぞれに小テーマを付けていきます。

ここで、初めて取捨選択します。
これを「構成」といいます。

必要の無い(と思われる)ものまで調べるのは面倒かもしれませんが、この作業はとっても大切です。
始めはそんなに悩まないでも
OK
例えば旅行なら、目的地の情報を行く前に丹念に調べること。
テロップやナレーションのために情報を調べるのではなく、撮影のために調べるのです。
そうすれば旅行もより楽しいものとなるはずです。

とにかく機材準備(撮影前日)

ロケスケジュールは10:0012:30がスタジオ収録(CMチック)、13:0014:00は某モデルハウスでの収録(右クリック)としました。

機材リストは右表ご参照。

スタジオ収録ではとにかく「シック。エレガント」な(思いっきり大上段に構えてますが・・・)イメージを作りたく、また、編集で特殊効果をかけるような下手な小細工だけは(いちおう、テレビ局スタッフの指導もしている立場上、恥ずかしいマネは)したくないので、照明は500W6灯、250W1灯、100W1灯を準備しました。

実際には500
W3灯+100W1灯で照明しています。
今回、思いのほか100
Wが活躍をしてくれました。
また、写真用のライトボックスも使っています。

いざ撮影

スタジオの雰囲気は、こんな感じ。
マウスのような小物を撮るには十分な広さです。
黒バック紙を敷き、その上に回転撮影台を準備。回転台に黒布(裏地に使う少々テカリの出てしまうヤッカイな布。2mで
980円)を敷きましたが、シワがあり、急きょアイロンをかけました。

例によって(デジタルビデオ8号:光を操る「照明」参照)マウスの上にカポックを掛けて簡単照明としました。
今回は、台本にもあるとおり、マウスの光の反射を上手く使いたかったのでキーライトは後方からとしました。
下手側には小さな100
WにB3フィルターをかけて、上手側には500W+B3を置き、どちらもカポックの反射で光らせるようにしています。

100Wはアームを使ってもぐりこませています。
500Wでは決してできない方法です。
写真の下手側の光はこの100Wの反射です。

カメラの色温度は前方のフィルライト(500Wナマ明かり)2灯に合わせて2900Kとしました。
これにより、後方からのB3をかけたライトは青く出るはずです。
マウス前面は正しい色で、上やサイドの反射光は青白くします。
最終的に、前明かりが不足してカメラ横にレフ板を置き、500W1灯を使うことにしましたので、後方2灯、前方2灯の計4灯にしています。

もうチョット早くできるかと思ったのですが、照明が決まるまで1時間近くかかってしまいました。

次に「右クリック」のタイトルバックの画ですが、これも横着照明ということで、写真のポジフィルムを見るためのライトボックスを利用しています。

カメラ設定の色温度2900Kのままでライトボックスの上のマウスを撮るわけですから、

1.マウスの影が出ない
2.青白い下地になる
ということになります。

ライトボックスは一般的な蛍光灯なので、約4000KでB3を付けたハロゲンとほぼ一致しています。
尚、インバータ式ではないライトボックスを使う場合は、1/100秒電子シャッターを入れるのを忘れずに。

今回のライトボックスはかなり使い込んでいるもので、蛍光灯管がヘタっていて、若干フリッカーが出ていますが、見なかったことにしてください。

後方からの照明はほぼそのままとしました。
ライトボックスの青白い光を出すために前方のハロゲンの光量を上げる必要(※4)があるので、思いっきりカポックに近づけて反射させています。

こちらはかなり簡単に済みました。照明を作って撮影終了まで10分程度です。

そんなこんなで撮影は予定より1時間近く早く11:35終了!スタジオ撮影を1時間半で終わらせた要因は、このまま時間通りに進むと昼飯にありつけないということに尽きるのぢゃ!(こんなテキトーなことで良いのだろうか・・・)そんなこんなで昼飯は円通寺坂(かなり急な坂で食前の運動には丁度良い)を下り、一ツ木通りまで遠征(これが午後の悲劇のプロローグだったとは・・・)。

余裕のよっちゃんのはずがケツカッチンになってしまいました。
やはり、撮影は十分に余裕を持って行いたいものですネ。

午後はモデル入りの「右クリック」の収録。
モデルハウスをお借りしての撮影なので、照明のことは一切忘れて、500W1灯での申し訳程度の明かりとしました。

しかしながら、どうしても譲れない部分もあります。
顔入りのシーンではキャッチを入れるために久しぶりに銀レフ(デジタルビデオ8号参照)を使いました。(※4)

私は通常、ナレーター(今回はモデルに頼みました)には数日前までにナレーション原稿を渡すように(努力)しています。
今回はスタジオ収録が終わり、モデルが来たところで原稿を渡しました。

昼食時も仕込み中も一生懸命暗記していました。
このような場合はナレーター基準で撮影します。「覚えた!」と言った瞬間に撮影できるようにしてあげましょう。
また、ナレーターの読みやすいように(意味を変えずに)変更する度量も必要です。
DVDのナレーションと原稿の違いにも着目してみてください。
「右クリック」ではそんなわけで撮影よりも映像編集に注目していただければと思います。
前述の通り、モデルハウスをお借りしている関係上、うっすらBGMが乗っています。
これは、モデルハウスに流れているもので、「切ってください」とは立場上言えない状況ですので、ご勘弁を。
編集の前に撮影のコツを少々。
読みも含めて約30分で終了してしまうような簡単な撮影なのですが、この一番の要因はモデルがカメラ慣れしていることに尽きます。

最も気を使う部分はモデルの目線。
「5秒前!」(※5)のカウントが始まってから、「カット」の声がかかるまでカメラ目線を外さないことが大切です。

慣れないとキョロキョロしてしまい、編集できなくなってしまいます。

さて、構成として、「初心者のためのパソコン講座」という大きなシリーズを作りました。
この第3回目で「右クリック」を取り上げるという設定です。

ちなみに編集システムは
CanopusRexceedM2000、編集ソフトはEDIUS2.5です。
タイトルはシリーズタイトルと小タイトルに分けています。
シリーズタイトルはマウスの渕に沿って湾曲させて、さらに色数を多くしてかわいく目立つようにしています。

右下の赤丸はテロップの重みを緩和(※6)するために入れました。
重箱の隅をつつくような話ですが大切なことです。


次に右クリックというとっても少ない動きの表現方法です。
これは、仕方ない。
テロップで補います。丸印や矢印を使って視聴者に注目させる必要があります。
フラッシュさせると、より注目度がアップします。

編集でタイトルからモデルに移る時にフェードアウト・イン(ここは、カットでも問題なし)していますが、注目していただきたいのはフェードアウトとフェードインの隙間。
アナログ編集では0フレームの隙間でも良かったのですが、ノンリニア編集ソフトによっては違和感が生じることがあります(図参照)。

今回の編集では隙間を7フレーム取っています。
何気なく見てみると連続しているように見えると思いますが、実は約1/4秒の黒が入っています。

前のクリップをフェードアウトして次のクリップをフェードインしたらキレイにつながると思ったら大間違いです。
是非、0、3、5、10フレームくらいをご自身で実験してみてください。

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