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山を楽しく安全に登るための55章
 by 森田秀巳

バテずに歩ければまずは成功
[山に登ろう]
こうやって歩けば疲れ知らず
  1. ウォーミングアップで体を温める
    • 登山者は、他のスポーツに比べてウォーミングアップが足りないようです。
      小学校の体育だってもっときちんとやっています。
      だいいち、いきなり歩き始めては心臓によくありません。
      突然心拍を上げろと命令されれば心臓だって対応に困ります。
    • 歩き始めてすぐ転ぶかもしれません。
      このときたいていの人は手をつきます。
      手首が固いままだったらきっと痛いだろうし、捻挫するかもしれません。
    • ウォーミングアップは特別のことをする必要はありません。
      とにかく伸びるところはすべて伸ばし、回るところはすべて回します。
      10分もやれば体は温まり、少し心拍数の上がった心臓は準備OKとなるわけです。

  2. 登りはとにかくゆっくりゆっくり
    • 山に登るみなさんは、歩くスピードがどうも速すぎるようです。
      息苦しそうにヒーヒーハーハーやっています。
      歩き始めなら少しはヒーヒーハーハーなるのはしかたありませんが、いつまでたってもこれでは完全なオーバーペースです。
    • 山登りは一定のスピードで歩け、とよくいわれますが、実際は傾斜がきつくなればなるほどスピードを落としていくことが必要です。

      こうすれば、心拍数も呼吸も一定のペースで落ち着き、苦しげな呼吸音も聞こえなくなります。
    • 山ではウサギさんではなくカメさんになりましょう。
      それでも頂上までの所要時間はあまり変わらないはずです。

  3. 小さな歩幅は疲れず滑らず
    • 坂道を登るという行為は、体への負担が想像以上に大きいのです。
      歩幅が大きければなおさらです。
      駅の階段を1段とばしで上ってみればよくわかると思います。
    • 山登りでは、足はそっと置き、ゆっくり体重移動し、靴の底全体にフラットに体重をかけるのが基本です。
      この基本どおりに歩けば、歩幅はおのずと小さくならざるをえません。
    • 小さい歩幅なら、粒石を敷き詰めたようなザレ場でも湿った泥道でも格段に滑りにくいのです。
      足元が安定すれば、足の疲労も大幅に減少します。

  4. 身近にあるものは何でも利用しよう
    • ビギナーのうちはカッコよく歩こうと思わないことです。
      とくに下りでは、少しでも不安を感じたらすぐに手を使うようにしましょう。

      木でも草でも岩でも何でもいいのです。

      強度を確認したうえで、積極的に活用したいものです。
      こんなとき軍手があれば、汚れやケガから手を守ることができます。
    • 足のほうも岩や木の根を有効利用しましょう。
      登りは踵を、下りはつま先を地面に転がった石や木の根に乗せて、靴底をなるべく水平に保つのです。
      白馬のような雪渓なら、スプーンカットに足を乗せ水平を保ちます。
      いずれも、足首のきつい曲がりをなくしてよけいな疲労を防ぐとともに、スリップを防ぐ効果があります。

  5. ストックで足の負担を軽くできる
    • 山でも街でもそうですが、疲れてくるとだれもが足をベタベタ引きずり気味に歩くようになります。
      これは山ではたいへん危険なことで、ちょっとした突起ですってんころりん。
      下りなら大ケガになりかねません。
    • 脚筋力は鍛えるに越したことはありませんが、その脚筋力の不足や衰えをカバーしてくれるのが、いまや中高年登山者の必携装備となったストックです。
      ではあるのですが、せっかくのストックを使いこなしていない人も多いようです。
    • ストックは転ばぬ先の杖。
      体のやや前方に突くようにしなければ意味がありません。
      長すぎても短すぎても効果はあまりありません。

      慣れないうちは腕の疲労も激しいものです。
      事前に練習しておかないと、かえって邪魔者になりかねないのです。
    • 同時に、草原やお花畑を歩くときは、植物を傷つけないよう先端にプロテクターを付けるのがマナーです。